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5.172019
ハーフソールとヴィンテージスティールの意味(part.2)
ハーフソールとヴィンテージスティールの意味
今回は第二回目です。
はじめる前にチョッと横道に(笑
(caag4dさんのチャンネルから引用)
※音声が出ますので注意してください
フットルース 懐かしいですね。
色々な靴が登場いたします。
最初のほうでノリノリの体勢でチラッと映っているのはsex and the cityの
サラ・ジェシカ・パーカーですね。
さすがに80年代では若いです。
彼女も靴マニアとしては相当有名ですね。
さて、本題にいきましょうか
ヴィンテージスティールの意味
リーガルのカントリータイプです。
vibram Exp’ソールにlulu(トライアンフ製)スティールを乗せています。
スティール+ハーフソールの良いところは、
この構成がソール保護の最強バージョンであるということ
に尽きます。
ソールの磨耗を極力抑えたい!という方にはオススメです。
前回の記事でも書きましたが、レザーソールは「呼吸する」と言われます。
これは通気性に優れるという意味ですが、誤解が大きいので説明します。
使用している時に汗を吸収し、脱いでいる時にはそれを放出する力がある
ということを主に意味しています。
アウトソールがラバー製である場合、そのような力はありません。
使用時に足から放出された汗はソックおよび中底と
ライニングに全てまわって最後はアッパーに吸収されます。
汗がアッパー本体の滞留すると、
クラックなどのヒビ割れや変質の原因となるのは周知の事実です。
対してレザーソールの場合はラバーソールにはない吸汗の効果と
天然の抗菌効果が期待できるので、
靴を清潔に維持しやすいという利点があります。
ハーフラバーソールを張ったとしても、この効果は落ちません。
通気性があるというのはアウトソールを超えて
汗が地面方向に下に落ちるわけではないのです。
なのでレザーソール+ハーフラバーは使用強度においても、使い心地においても
理にかなった理想的な形と言えるわけです。
ユニオンインペリアル
上のリーガルと同じ仕様の修理過程です。
このように先にハーフソールを張ってから、
つま先にスティールを埋め込むためのスペースを作ります。
出来上がるとこういう感じ。
ハーフソール+スティールはまったく段差がつかず、
ソールとして理想的な形に仕上げられます。
実用強度は言わずもがなです。
カルミナ
同じようはハーフソール+ヴィンテージ・スティールですが
ソールは屈曲の良いvibramシモンソール。
ソールの返りに配慮した蛇腹構成のハーフソールです。
ダブルソールなどの屈曲のしづらい物にはこちらの方が合いますね。
チーニー
新品の物にスティールを取り付けています。
「馴らしたいからすぐ履いて行きます」
と、おっしゃって受け取り時に即、履いていかれました。
後姿を見るとスイスイと歩かれていましたので
レザーソールでの歩行にかなりなれておられるオーナー様でした。
ラバーを張らず、レザーソールのまま保持したい場合
グッドイヤーウエルト製のシューズは
ウエルトを守るためにヴィンテージスティールの装着は有効です。
英国製の靴に多い製靴方法にこのグッドイヤーウエルトという製法があります。
この製法の靴を維持していく点で大切なことは
ソールは磨耗させても「ウエルト」までダメージを及ぼさない
ということです。
ウエルトまでダメージを放置すると靴そのものがダメになります。
イタリアで主流の製法、マッケイ製法とはここが大きな違いです。
英国系の雰囲気の靴が好きな方はこの点に十分注意してください。
ウエルトは通常つま先の磨耗から傷みます。
それを守る意味でヴィンテージスティールの装着があるわけですね。
ジョンロブです。
紳士靴の最高峰と呼ばれるこのロブやエドワードグリーンなどは
ややセンシティブな言い方にないますが、
実用性うんぬん以前に工芸品(芸術性)としての価値と完成度が高いので、
ハーフソールを張って使うというのはオススメできません。
それでもつま先の磨耗は無視出来ませんので
スティールの装着はデザインの邪魔をせず、有効だと思います。
ベルルッティなども同じ感想を持ちますが、
こちらは上記の物よりエレガントさ重視でソールの造りも若干
華奢なので、ハーフソールもアリなのかもしれません。
アレンエドモンズのローファーです。
当店にお見えになった時、すでにスティールの装着がされていましたが、
それも程よく磨耗した状態になっておりました。
ですがレザーソールのままの使用で底縫い糸が切れてソールがウエルト
(この場合はブレイク製法の靴でしたので正確にはミッドソールですね)
から分離しかかっておりましたので、
部分的に切れた糸を縫い合わせて減りこんだ部分をレザーでアタッチします。
縫い上げてからアタッチを行うのは通常では逆の工程になるのですが
(アタッチを行ってからソールを縫い上げた方が当然強く仕上がる)
今回は次回のソール交換を考え、元の縫い目を手縫いで拾っていくことで
ウエルトに余分なダメージを与えないようにすることを優先致しました。
上記の靴のafter(仕上がり)です。
やはりアレンのコードバンは美しいですね。
オールソール時にもスティールやラバーを組み込む
イタリア式のマッケイ製法の靴ですが
ソール交換時に予めスティールとラバーを組み込んであります。
このようにソール交換時に付けてしまうとコスパも良く、
レザーソールの利点を生かしながら
ガンガン履いていっても安心という仕様にも出来ます。
Lady’sのヒロフのローファーです。
これも最初に組み込んでおけば滑ったりせず、
元のレザーソールのさわやかさをキープ出来ます。
最後はオーツカM5
国産靴でも非常に高品質の物です。
ベルギーレザーベンズ+ヴィンテージスティールの構成です。
良いレザーソールの靴は本底にも耐久性に優れた革を使用しています。
ベルギーベンズはオークバーク(レザーソールの最高峰といわれる)よりも安価で
かつ耐久性にも十分なものがあります。
あえて高価なソールを使って高額な修理をするよりも、
そのぶんスティールをプラスして
磨耗にそなえておくのも上手な使い方かと思います。
ということで
今回は二回に渡ってハーフソールとヴィンテージスティールについて解説をいたしました。
ご参考になれば幸いです。
では本日は以上。
ハーフソールとヴィンテージスティールの意味(part.2)でした!